(引用:東洋経済)
東洋経済が「住みよさランキング2021」を発表した。
それを見て驚いた。それは倉吉市が5位だったということ。それと同時に山陰人として、とても誇らしかく感じた。本当におめでたい。
ただそれと同時に「住みよさ」というのは定量的に測れるものでなく、そこに実際に住んでみて感じるものだという疑問も生じた。そこで今回はその「住みよさ」のランキングについてどのように算出し、どのように順位を付けたかを深掘りしたい。
ちなみに、本ランキングの上位50位以内に、山陰勢では米子市(28位)と境港市(41位)がランクインしていた。鳥取県の台頭が目立つ結果に。本当に誇らしい。
島根県上位3市は出雲市58位、松江市286位、浜田市321位になっている。
住みよさランキングの順位詳細はこちらから。
①住みよさランキングとは
そもそも「住みよさランキング」とは。
東洋経済「都市データパック」編集部が93年から発表している「住みよさランキング」は、自治体ごとに、「住みよさ」を表す各指標について偏差値を算出し、その偏差値を総合評価して順位づけしている。
そして、今回の住みよさ算出指数は、「安心度」「利便度」「快適度」「富裕度」の大きい4つの視点からなる20の指標を採用している。2020年のランキングと同様の算出基準としている。
②ランキングの算出指標・方法
算出のルールは以下の通り。
1、対象自治体
全国の792市と、東京20区(千代田区、中央区、港区を除いた東京特別区)の812市区となっている。町村は対象外ということ。
2、算出指標
「安心度」「利便度」「快適度」「富裕度」の4つの視点から、20のデータを用いて算出。
3、算出方法
各指標において、偏差値(50を平均)を算出。全ての指標の偏差値を平均したものを総合評価としている。
偏差値は特異数値による過度の影響を受けるため、角指標の最高を70、最低を30に調整している。
4、算出指数の項目
算出の項目は次の通り。
「安心度」
(1)人口当たり病院・一般診療所病床数(2019年10月):厚生労働省「医療施設調査」
(2)老年人口当たり介護老人福祉・保健施設定員数(2019年10月):厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」
(3)20~39歳女性人口当たり0~4歳児数(2020年1月):総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
(4)子ども医療費助成(対象年齢・所得制限の有無)(2021年4月):東洋経済調べ
(5)人口当たり刑法犯認知件数(※)(2019年):各都道府県警察調べ
(6)人口当たり交通事故件数(※)(2019年):交通事故総合分析センター調べ
「便利度」
(7)人口当たり小売販売額(2015年):総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」
(8)人口当たり大規模小売店店舗面積(2020年):東洋経済「全国大型小売店総覧」
(9)可住地面積当たり飲食料品小売事業所数(2016年6月):総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」
(10)人口当たり飲食店数(2016年6月)総務省・経済産業省「経済センサス活動調査」
「快適度」
(11)転出入人口比率(2019年):総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」
(12)水道料金(※)(2021年4月):東洋経済調べ
(13)汚水処理人口普及率(2020年3月):国土交通省、農林水産省、環境省調べ
(14)気候(月平均最高・最低気温、日照時間、最深積雪)(1981~2010年):気象庁「メッシュ平年値データ」
(15)都市計画区域人口当たり都市公園面積(2019年3月):国土交通省「都市公園整備水準調書」
「裕福度」
(16)財政力指数(2019年度):総務省「市町村別決算状況調」
(17)人口当たり法人市民税(2019年度):総務省「市町村別決算状況調」
(18)納税義務者1人当たり所得(2019年):総務省「市町村税課税状況等の調」
(19)1住宅当たり延べ床面積(2018年10月):総務省「住宅・土地統計調査」
(20)住宅地平均地価(2020年7月):国土交通省「都道府県地価調査」
5、要約すると
と、1〜4の説明を見て、算出の計算が難しいという方が多いと思う。
特に偏差値の説明のところ。
簡単にいうと、高校の模試で各教科の偏差値をだして、平均をとって、順位にしてみた。
これの自治体版で、項目をつくり、偏差値を出してランキングしたと思ってもらえたらいい。
③上位市の各視点の順位比較
各順位は以下の通り
やはり、総合上位に食い込む市は、いずれかの分野で飛び抜けていい順位を出している。
そして、各分野で飛び抜けて悪い順位を出していないという点が挙げられる。
ある程度のバランスが求められるように感じる。
④倉吉市の順位考察
倉吉市が5位にランクインできた理由について深掘りをする。
要因として、安心度の順位が7位ということが大きい。安心度が貢献している。
その中でも、突出しているのが、20~39歳女性人口当たり0~4歳児数(2020年1月)の割合
表にして全国と倉吉市を比べると以下の通り。
0〜4歳児数 | 20〜39歳女性人口 | 割合 | |
全国 |
4,691,305 |
12,712,714 |
0.3690…. |
倉吉市 |
1,761 |
4,039 |
0.4350…… |
と、20~39歳女性人口当たり0~4歳児数(2020年1月)の割合で全国平均を大きく上回った。
この結果をもたらした要因として、倉吉市の子育て世代へのサポートの手厚さが大きいと考える。
倉吉市の代表的な子育てサポートは次の通り。
病児保育室が設立
急な発熱など、子どもの体調が悪いのに、仕事の都合など家庭で看護できない場合に、子供を預けることのできる病児保育室があるため、子育て世代には強い味方になっている。
ファミリー・サポート・センター
「子育ての援助をしてほしい人」と「子育ての援助をしたい人」を会員として登録してもらい、お互いに子育てを支え合う活動で、児童クラブの送迎などのサポートをしてくれるというもの。
子育て世帯買い物応援事業
子育てを支援する環境を整え、子育て世代の経済的負担の軽減を図る目的で、買い物応援事業協賛店での」買い物の際には割引や特典等のサービスを受けられるというもの。
不妊治療助成金交付事業
全国的に子どもを望む夫婦による不妊治療が増加している背景がある中で、倉吉市は人口受精などの不妊治療への助成を行なっている。
上記に記したもの以外にも子育てに関するサポートが数多くあり、子どもを望む夫婦から子育て世代まで幅広い人々を手厚くサポートしてくれる制度が整っている。
これらが、「20~39歳女性人口当たり0~4歳児数(2020年1月)の割合」を大きくする要因だと考えた。
⑤まとめ
今回は、東洋経済が「住みよさランキング2021」について深掘りしてみた。
総合50位に入ってくる市については、地方都市や県庁所在地などは少なく、どちらかというと地方や田舎が多い結果に。
というのも、人口あたりの指標が多く、人口減少地域においてはそれだけ大きくなりやすい傾向がある。
だから一概に住みよさランキングが高いからといって、市民も満足度が高いとは言い切れない。この順位を鵜呑みにしすぎず、市の繁栄に勤めたいところ。
ただ、多くの市があるなか、上位に食い込めることは、本当にすごく、誇らしいこと。
上位に食い込んだ倉吉市、米子市、境港市には驚きを隠せない。心から称賛したい。